爆音マフラーは本当に事故防止に効果があるのか

マフラーを爆音にしている人が言い訳として「事故の防止になっている」と言うことがあります。これは本当でしょうか? ちょっと考察してみたいと思います。

まず見て欲しいのが、警視庁が公開している都内の事故類型別の死亡事故の統計です。25年の数字を見ると、単独事故が最も多く15件 (37.5%)、次が右直・右折事故で14件 (35%)、次いで出会い頭5件 (12.5%)、と続きます。

まず言えることは、バイクの死亡事故は4割弱が単独事故なので、当然、マフラーの音を大きくしようが何をしようが、防げないということです。一方で、ヘルメットや胸部プロテクターを正しく装着することで死亡率を下げられる可能性があるということですが、これについてここでは深く議論しません。

次の右直・右折が死亡事故の1/3を占めています。四輪車に比べて正面からの投影面積が小さいバイクは視覚的に遠くかつ遅く見えるため、間に合うだろうと右折した車に直進してきたバイクが衝突する事故です。時速60kmでバイクが走っているとして、右折に3秒掛かる(けど間に合うと判断した)と仮定した場合、この3秒間にバイクは50m進みます。人間は五感のうち視覚に最も依存していますので、50m以上離れた場所でバイクが爆音を鳴らして走っていても大した判断材料にはならないでしょう。しかもドライバーは車体に囲まれて遮音されています。判断力や聴力の鈍る高齢者が右折する車の場合は言わずもがなです。

つまり、バイクの死亡事故の8割近くはマフラーを爆音に改造しても防ぐことができない、と考えてよいのではないでしょうか。

次の出会い頭ですが、これはもしかしたらクラクション的な意味で効果があるかも知れません。ただ、出会い頭の事故が起こるような交差点で減速している場合はアクセルオフしているのでそもそも爆音が出ていない可能性があります。また、上述したように人間は認識のかなりの部分を視覚に頼りますので、爆音が聞こえても距離や方向が不明な状況では視認すべく車を動かすでしょう。そこにバイクが突っ込んでしまう可能性も捨て切れません。

1名死亡の追突ですが、これも普通に考えれば出会い頭同様にアクセルオフしているはずですので、爆音が出ていません。

もう1名が死亡している追い越し・追い抜きですが、これももしかしたらクラクション的な意味で効果があるかも知れません。しかし、高速道で見掛ける無謀な追い越し・追い抜きや、渋滞でのすり抜けだとすると、明らかにライダー側が死にに行こうとしているとしか思えないケースが多々見受けられます。

また、爆音であるが為に要らない不和を周囲に撒き散らしている可能性も捨て切れません。つまり、爆音がドライバーに対する煽りと取られてしまう可能性です。煽られたと勘違いしたドライバーにライダーが煽られ、バイクが単独事故を起こしてしまう、というケースは考え過ぎでしょうか。

ここでは死亡事故にのみ着目しましたが、交通事故で一番多いのは追突、次が出会い頭です。少なくとも追突については爆音が出ていないと考えられるケースですので、爆音で交通事故で一番大きな割合を占めす追突事故を防ぐというのは無理な話です。

結論として、バイクの爆音は周囲に迷惑を掛けるだけで、事故そのものの防止にはほとんど役に立っていない、と考えてよさそうです。

2017/05/24追記: 事故類型別の統計へのリンクが切れているようです。後日修正しておきます。取り急ぎ、警視庁が公開している二輪車の死亡事故統計へのリンクを張っておきます。

爆音マフラーは本当に事故防止に効果があるのか」への2件のフィードバック

  1. いまさら

    単独事故の内容まで考えているだろうか?
    歩行者やクルマなどが突然出てきて避けようとして転んだ場合、接触していなければ単独事故だ。

    返信
  2. masatoshi 投稿作成者

    いまさらさん

    コメントありがとうございます。確かにご指摘の通り、事故が発生した具体的なシチュエーションは不明です。ただ、以下のような資料もありまして、単独死亡事故の主原因はスピードの出しすぎで、発生場所はカーブが多いようです。要はスピードを出し過ぎてカーブを曲がり切れずに転倒したり構造物に激突と考えて間違いないかと思います。

    http://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info07/info07_1.html
    http://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info52.pdf
    http://www.honda.co.jp/safetyinfo/kyt/communication/communication4.html

    もちろん、出会い頭で相手を避けようとして転倒・激突というシチュエーションがまったくないとは思いません。実際、もらい事故のようにカーブで膨らんできた対向車を避けようとして発生した事故もあるようです。とは言え、単独死亡事故の危険認知速度の平均が70〜80km/hということを勘案しますと、単独死亡事故を防止するには法定速度を守ってカーブではちゃんと減速する、防衛的な運転を心掛けるというのがベストであると考えます。

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